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片方だけの言い分を聞いて判決してはいけない。原告と被告の両方の言い分を聞いて、公平に判定を下さねばならないということ。
「うるさいからですか?」
彼は問ひ返した。
「なんにもならないから」
「なんにもなりません、たしかに……」
昂然と、彼は云ひ放つた。そして、ゆつくり椅子から離れた。
やがて、彼は、帽子を左手で弄びながら、門を出て行つた。
母と共にそれを見送りながら、素子は、かすかに溜息をついた。
「どうしたん、お前、急にへんやないの、両方ともむつつりして……」
「へんよ。あの人がへんなのよ。子供臭いつたらないわ……」
「喧嘩かい、みつとむない」
「喧嘩する理由がないぢやないの。だあれも来てくれつて頼みもしないのに、のこのこやつて来て……。ひとの顔そんなに見ないでよ、母さん……」
彼女は、精がないといふやうに、さう云つたと思ふと、さつさと奥へ引つこんで、自分の部屋の扉を、中からがちやりと閉めた。
翌日、昼近く、彼女は、大阪ビル新館のエレベーターの前に姿を現はした。
仕立おろしの洋装に、念入りの化粧をしてゐた。
エレベーターから吐きだされる人々は、いづれも彼女の方を振り返つた。
田沢社長は上機嫌であつた。
専務の高野と人事係とを呼んで、まづ、彼女を引合せた。次いで、宣伝部長の辻が掌の膏をズボンの尻で拭きながらはひつて来た。
「さつき話した斎木素子さんだ。社長が三顧の礼をもつて迎へた方だからね、万事特別にな。指導は指導、命令は命令だが、一方よくまた、このひとの希望もいれてね、大いに独創力を発揮してもらはんといかんな。宣伝部に籍があるのは勿論だが、同時に、社の高等政策だな、つまり、宣伝ならざる宣伝の部門で、自由に活躍できるやうにな、君ひとつ、そこは含んでおいてくれたまへ。他の部員にも、君からよく誤解のないやうに説明しておく必要があるぞ」
宣伝部長は、社長に一礼し、
「それぢや、こちらへ……」
と、彼女を促した。
彼女の出かたが
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