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片方だけの言い分を聞いて判決してはいけない。原告と被告の両方の言い分を聞いて、公平に判定を下さねばならないということ。
社長もなかなか苦労が多いと彼女は思つた。しかし、それにしても、もうぼつぼつ仕事をはじめなければならぬ。それだのに、辻部長は、遠慮をしてゐるのか、それともまだ役に立つまいと思つてか、一向、仕事らしい仕事を与へてくれぬ。
彼女はある日たうとう部長をつかまへてかう云つた。
「あたくしにできますことなら、何かやらせていただきたうございますわ」
「いや、雑用はこれやもう、それ専用の人間がゐますからね。それより、今度区画割のできた杉並大宮前の土地をちよつと見て来て下さい。専務の御命名で「東光台」、東の光です、さうきまつたんですが、ひとつ、その宣伝文案をこさへてみてくれませんか。やはり、時局を反映させた文句を使はんと専務のお気に入らんですからな。これやまあご参考までに……」
「土地を見て参りましてからでよろしうございますね」
「さう、土地を見てですな、周囲の風物、つまり環境を、最上級の言葉で讃美するといふのが、まあわれわれの常識です。前例をみられたらわかります」
「拝見いたしました」
と、彼女は笑ひたいのを我慢して応へた。
「乗物の便利がちよつとわるいですからな。荻窪駅から、代田橋行のバスに乗つて、柳窪といふところで降ります。それから五日市街道を……」
この時、女事務員の一人が、
「斎木さん、お電話ですわ。あちら、お名前をおつしやいません」
彼女は受話機を通して聞きなれない男の声を聞いた。
彼女の出かたが
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